路端の味覚・六福(ロクフク)飯店
第四回「六福」
シアヌーク通りからモニヴォン通りを北上すると、すぐ左手に観光省の建物が見えてくるが、そのちょっと手前の右手にあるのが、今回紹介する中華料理店・六福である。
客の少ないときはエアコンを止めてしまう北京菜館とは違い、ここはいつ行っても冷房中。各客席のすぐ脇にエアコンがあるため、冷房効率はかなり良いといえる。日本人観光客用に作られた日本語メニューのほか、料理の写真を集めた文字通りのアルバムが置いてあるので、オーダーに苦労することもない。
マスターは精力剤のコマーシャルに出てきそうな中国人のおやじ。予想通り声も必要以上にでかく、おまけに良く喋る。そしてこの親父‥‥いやマスター、全中華人民の大多数と同じくギャンブルが死ぬほど好きらしい。
我が編集部が独自に入手した情報によれば、昨年一度、某ホリディホテルのカジノで大負けした挙げ句、ここにはとても書けないような地獄を味わい、それにも負けず金策に走り回って見事復活したというもっぱらの噂である。
地獄から蘇った店主が提供する料理は、どれも美味しい。焼きギョーザ、水ギョーザは北京菜館と変わらない味だし、マーボー豆腐はピリリと辛めでビールとよく合う。そしてこの店独自のメニュー(?)。バラ肉をハシで簡単に切れるほど謎のスープでトロリと煮込んだ名称不明(失礼)の肉料理は、少々ヘヴィーで重たいが、こってりしたのが好きな方には堪らない味だと思うので、ぜひ試してもらいたい。無責任で申し訳ないが、料理名を忘れたので写真を参考にそれらしいのを試してみてね。
ビールといえば、六福ではなぜか中国系のビールしか飲むことができない。ちなみに我々取材班が大声でハイネケンを注文すると、間髪入れず声のでかい親父からねえよと怒鳴られ、問答無用で青島ビールを飲まされた。なにか主義主張があってやっているのか、それとも単なる好き嫌いなのか、謎は深まるばかりである。