プノンペン深夜三時
未明五時、市場の商人たちが動き出す時刻だというのに、未だ音量最大で若者たちが踊り狂っているという、超退廃的なスポットがプノンペンにある。観光名所であるペン夫人の丘から、やや北に位置するホリディホテル内のディスコ「マンハッタン・クラブ」がそれだ。
一昨年のオープン以来、ディスコとしてはカンボジア最高峰の座を譲らず、プノンペン市民たちにとっても、あこがれのスペースとなっている。
もっとも、違法な薬物の取引が内部で頻繁に行われている‥‥女性客のほとんどが売春婦‥‥などという良からぬ噂も色々あるが、選曲はユーロビート中心で雰囲気も明るく、タイのディスコに近いような印象を受ける。
ただ、ビール一杯が6ドルもするなど、庶民にとっては敷居が高く、客層は華僑と地元の金持ち、高級官僚が大半を占めているといった感じだ。
この店の中にいると、ここがカンボジアだということを忘れてしまうほど、ものすごいパワーに満ち溢れたところだが、しかし一歩外に出てしまえば、客目当ての物乞いと貧相な屋台がひしめいている。
一部の金持ちと庶民の圧倒的な格差。このディスコをとりまく環境は、中流階層が育たないカンボジアの縮図でもあるかのようだ。
(アリムラヨシヒロ・放送作家)