カンボジアの遊び
男女の交際にとかく厳しいカンボジア社会ですが、カンボジア正月前後に青少年があちこちで好んでする遊びに関しては、驚くほど寛容です。
どれも男女が手をつなぎ、体に触れあい、自由に振る舞えるものですが、親たちは周りで見ていても、このときだけは決して誰も止めに入りません。親も子供のとき、そうして遊んだ思い出があるからでしょう。
●遊びの例・その一
男女ペアーが全員で手をつなぎ、大きな輪を作ります。一組がオニになって、輪の外側をまわります。オニは輪を作っているペアーのどれに触っても良く、触られたペアーはすかさず輪を離れ、輪の外をオニと反対方向に一周しなければなりません。
これと同時にオニのペアーも、触ったペアーと反対方向に輪を一周します。相手よりも素早く一周したほうが、輪の中に入ることができます。輪に戻るのが遅れれば、オニになって再び同じ行為を繰り返さなければなりません。
ペアーとなった男女にはチームワークが要求され、将来夫婦となってやっていけるかの相性判断にもなります。
●遊びの例・その二
男女交互に列をつくり、列と列で大きな輪を作ります。一人のオニが輪の外側を周り、列の一番後ろにいる人を叩きます。叩かれた人はオニになって、叩いた人を追いかけますが、叩いた人がすかさず列の前に立つと、その列の一番後ろの人が列からはみだし、叩いた人の身代わりとなってオニに叩かれる役目になります。
オニに叩かれたくなければ逃げまくり、どこかの列の前に立てば、再び列の後方にいる人が身代わりとなります。すなわち、列の一番下の人を意識した心理ゲームといえます。
オニになった人は、ここぞとばかり、好きな人や嫌いな人を意識します。お互い相手が日頃自分にもっている思いをぶつける遊びです。
●特徴
途中参加、脱退自由(誰も文句を言いません)
何人でも参加可能(場所があれば)
若者は誰でも参加できる(大人は参加禁止です)
男女がペアーになる(最大のポイントですね)
これらの遊びを通してお互いの好意を示し合い、自分の思いを伝え、カップルが誕生します。
逆に言うと、遊びのとき以外では、お互いに手をつないだり、体に触ったり、親密に話したりできないということになります。厳しいですね。
たまたま通りすがった若者たちも参加して、輪はどんどん大きくなってゆきます。
こうした遊びは夕方、あたりが薄暗くなる頃からはじまり、二〜三時間は休むことなく続けられます。疲れたら自由に輪の中からはずれ、イスに座ったり、雑談したり、水を飲んだりします。そして元気が出てきたら、また輪の中へ入ります。