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数年前、剣道日本の「談話室」で居合界の段位について「悪貨は良貨を駆逐する。」という文頭で始まる昇段試験の不条理を批判した文章が掲載されたことを覚えているだろうか、六段審査を10年かけて受験し合格できないものが居れば、若年層もしくは相当の年配者になって居合をはじめたものがスムーズに昇段していく、不合格したものは技の未熟さをなじられ、合格者はその努力を絶賛される。世間一般は武道の世界に崇高な精神が存在し、高段者に対し畏敬の念を抱くのである。昇段審査の審査員は長い修行を積んでいるからこそ審査能力がありとし、未熟者には良いもの、悪いものが判るわけが無いとおっしゃる。
その実、審査員は弟子筋のもの、知り合いのもの、高段者の御身内の者を極力昇段せしめ派閥形成にいそしみ、そのあまりにも露骨な審査結果は結局有意な青年たちを落胆させ、居合界から駆逐して憚らない。受験料、交通費、宿泊料等莫大な費用をかけ茶番劇に出席するばかばかしさ。コネクションを得るための時間と無駄な出費、武講同窓会などその際たるもので、ここでコネクションを得ないと六段・七段合格など夢の夢である。いつものように各大会で模範演武なるものが七段、八段の居合道家により行われるが、そのうち何名が模範演武たる価値を有するのであろう。
ばか者には見えない洋服をきこしめし、裸で街を行進した王様のように、未熟者にはわからないという高段位をまとった居合道化が会場で居合を披露する。
さすがに「大人」ばかりと見えて「王様は裸だ。!」とはいわれないにしろ奇異な光景でもアル。
今回の全剣連の段位制度改正は益々、既得権のあるこれらの居合道化たちに便宜を図る根拠にならなければよいのだが。
50歳で剣道などやったことの無い男が権威を得るため連盟の実力者に頼んで五段を戴いた実例を知っている。居合もしかり、形だけ3ヶ月特訓し5段をもらい、特例で六段受験の修行年月を短縮してもらうことなど簡単なことだ。幼少から名のある先生に付き修行しても世渡りの下手な奴は五段止まり、怪しげな高段者に指導される憂き目に合い、ばかばかしくなり居合道界を去っていく。技術の向上よりも高段位の取得、居合の修行がおぼつかなければ高段位を得たことで努力し修行した気持ちになるしかない現実、真髄をつかむのは困難なのだ。それにつけても現在の各種演武会のしまりの無さよ、往年は水を打ったように静まりかえった会場も雑談の嵐である。
面白いのは制定居合が12本になるという怪情報が個人ホームページにて発表されている。
これなどは関東地方のある県のボス的存在の高段者が勝手に弟子たちに吹聴しているのではないかと思われる。ある流儀の大方の高段者は驚くべきことに正座の大森流と制定居合しか知らないのが現実である。いや、中伝、奥伝も習っていると反論するかも知れぬが、その師の師たるや数回の講習会や、山蔦重吉。段崎友影両先生の御本で形の順番を覚えたに過ぎないのが実情だろう、はっきりした道統がないのだ。少しでももち技を増やしたいのだろうが制定居合にかこつけて本来の伝統ある古流の技を改ざん、弄繰り回すことは謹んで戴きたい。
昇段審査で剣道連盟に提案したいのは喩えば六段合格に多くの時間を有した場合い、七段審査においては六段合格までに要した長い期間も考慮し、修行期間を短縮できないかということだ。コネクションではなく、本当の修行で勝ち取った六段は七段以上の実力を有している可能性が大であり、それこそ生涯学習を標榜する今回の段位制度改正論を反映していると思うのだが。
                                      
       文責:東海文明







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