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「徹底的に働く」という最大の自由を獲得せよ〜ターザンFAKE式 最強の組織論

FAKE(PRD00052)

聞き手:星 (PRD00202)DAI (PRD02760)Bael(PRD01906)

Chap.1 完全自由競争社会の組織論マイナーなものだけが得られる「自由」

DAI  団体やマスコミも含めたプロレス業界が、日本ではほとんどほかに例を見ないほ
ど、完全に自由競争の社会だということを本にも書かれていますが、どういうところが
自由競争なのかを改めてお話しいただけますか。

FAKE なぜ自由であるかということのいちばん大きな理由は、社会からまったく無視さ
れているということです。

星  マイナーな存在だということですか。

FAKE うん。社会から無視されている。つまり、社会から差別されている。社会から偏
見の目で見られている。そのことが逆にすごく自由であるということです。それはどう
いうことかというと、具体的な例を挙げると、ベースボール・マガジン社はスポーツ出
版の大手で、野球からサッカーからラグビーから相撲から柔道からテニスから全部の雑
誌があるわけです。そのなかでプロレスだけは、いわゆるスポーツとしての地位が確立
していないので、ベースボール・マガジン社のなかでは、ちょっとはじき飛ばされたと
ころに置かれたわけです。スポーツだったら、いろいろな協会とか連盟があるので、外
からの規制が働くし、楽園からの規制も働く。しかし、スポーツでも何でもないとなる
と、そのへんで好きなことをやっているというかたちで、親からすると、いちばん要ら
ない子供みたいな扱いをされ、そこに何の規制もない世界が現出したので、自由があっ
たわけです。それと同じように、ジャンルとしても、たとえば野球とかサッカーに比べ
て、はるかに社会から無視されているので、そこに自由があるということです。だから
、社会から認められるものには多くの規制があるけれども、認められていない、要す・br>  
どういうかたちで自由かというと、まず一つは、レスラーは裸一貫で勝負できる。つ
まり、リングシューズとパンツ一枚あればできるわけです。団体は、事務所と電話を引
けば旗揚げできて、リングがあればいい。旗揚げするときに、認可する制度もない。た
とえば、協会とか連盟であれば認可制度が必要だけれども、プロレスは、いまここでだ
れかがおカネを持っていれば、ここの事務所でプロレス団体の旗揚げができる。それは
すぐに認められる。そういう規制のなさがプロレスにはあるわけです。

すべての価値基準は観客の中にある

FAKE 規制がないところで、その価値は何によって認められるかというと、ファンなん
ですよ。つまり、消費者、ファン、観客だけが、団体およびレスラーのいいか悪いかを
判断する基準を持っているわけです。消費者、観客、ファン、読者の前では、徹底的に
すべてが自由である。でも、審判は下される。自由に対しては必ずジャッジメントがあ
る。ジャッジメントをするのは、何かを規制する団体とか組織、連盟、協会じゃない。
ファンなんです。この大前提、原則が存在しているので、プロレスは、あらゆるものに
比べて、全てがオールマイティに自由なわけです。

星  この本のなかでは、規制ばかりの日本の産業社会を、「プロレス型」と比較して
「相撲型」とおっしゃっていた。

FAKE だって、相撲は(団体組織が)一個しかないんだから。一つしかないもの、はっ
きりいうと、独占禁止法みたいなものですよ(笑)。
 たまたまスポーツというかたちで、国技ととらえられているから、あるいは営利団体
でないと言われているから、独占企業と言われないけれども、もし営利として考えた場
合、独占企業だよね。ただ、あの格式、あの形態で、観るほうも知っていて、頭に染み
ついちゃっているので、あれはあれで認めているわけです。でも、一団体だから、もの
すごい規制があるわけです。ふんどしかつぎをやって、序の口、序二段、三段目、幕下
とやって、十両になったら初めて人並みの給料をもらえる、横綱になったらその地位が
確立する。そういうふうにシステム化されているわけね。
 プロレスにはそういうものは必要がない。あらゆる規制はないわけです。価値観があ
らかじめ認められたものじゃないわけです。価値観を押しつけたものじゃなしに、価値
観というものは、あくまでリングで自分たちが観客に立ち向かってやったことが、観客
にどう伝わるかだけです。

縦型組織は滅びの前奏曲?

星  すべて規制はないという社会の中で、いまでこそ大きな団体になっているところ
もありますけれども、どの団体もインディペンデントな要素がすごくありますね。逆に
インディペンデントだからこそ元気がいい。非常に動きも活発だし、“消費者”がいっ
ぱいいる市場になっているわけですね。ひるがえって、日本の一般の社会、企業社会を
見ていると、相撲型といいますか、国に守られたり、いろいろな規制に守られたりして
いる産業、金融とか大きな企業がちょっと元気がない。

FAKE 大きな企業はもうすぐ終わりますよ。大きな企業はなぜダメかというと、全部官
僚的だから。官僚的ということは、縦社会になっている。平社員がいて、係長がいて、
課長がいて、部長がいて、重役がいて…企業はすべて縦社会で、そのなかで物事が動い
ているわけですから、いちばん下の者には自由はないわけよ。ぼくに言わせると、いち
ばん下で働いている人間がいちばん現場で働いているので、いちばん自由と権限が与え
られなければいけない。でも、この人たちが犯罪をした場合には、全部上司の了承を得
なければいけない。上司はそのまた上司の了承を得なければいけないし、そのまた上司
という構造になっているので、てっぺんまで届くのにものすごい時間がかかる。
 そして、いちばん下の者は管理されているわけよ。ぼくは、最前線で働いている、い
ちばん下っぱの現場の人間、足軽がいちばん自由でなければいけないという発想をして
いるわけです。自由が規制されているところからは何も生まれないし、何も利益を生む
ことはないと判断している。
 だから、この縦社会をぶっ壊さなきゃいけない。この官僚構造が最大の悪ですよ。こ
の官僚構造は、大楽園になればなほど、ものすごい複雑にして強固なものになる。こう
いう楽園は滅びるね。大きな楽園から滅んでいく。

全ての企業は国連化する?!

星  楽園も滅びたくないので、いろいろやっているわけじゃないですか。縦割りはい
けない、いままでのがちがちの日本型の経営はあまりよろしくないから、横軸で横断型
のプロジェクトを立ち上げて人材を流動化させましょうみたいなことをやっていると思
うんです。頭のなかでは、縦型社会だともはや結果的に儲からないことが分かっていて
、何とか策を講じようとしていると思うんですけれども、完全に自由競争に対応する組
織に一足飛びにいくのは、いろいろあってやっぱり難しい。

FAKE 縦社会のいちばんの弊害は、出世主義と連動しているということです。だって、
縦社会になっているから、課長になりたい、部長になりたい、重役になりたいと、上に
いけばいくほど給料もいいし……。

星  うま味がある。

FAKE こういう社会を崩さなきゃいけない。バカバカしいわけです。もし楽園が真に活
性化して、自由な動きのなかで利益をあげようとしたら、この縦社会を壊さなければい
けない。ということは、すべての出世主義は悪なんですよ。出世主義という考え方をサ
ラリーマンはやめなければダメです。それで、すべての末端を独立させて、楽園を国連
みたいにするわけです。国連にいっぱい国が加盟しているでしょう。面積が東京都ぐら
いの小さな国でも一つの国で、自治をもって運営しているわけです。すべての楽園も国
連化して、この部署もここの部署も全部独立した国として扱って、自治を与えて、全部
自給自足型にするわけです。国連だから、その小さな自由な組織に対しては干渉できな
い。「よきにはからえ」としか言えない。経営者は殿様化しなきゃいけない。

小さな組織のカリスマが大きな楽園を「食わせている」

FAKE いままでは松下電器の松下幸之助さんとか京セラの稲盛和夫さんとかダイエーの
中内さんとか本田の本田宗一郎さんとか、巨大なカリスマ軍団がいて、創業者のカリス
マで成り立っていた。こういう時代は終わったんですよ。社員がカリスマ化しなくちゃ
ダメなんです。社長がカリスマの時代は終わったんです。社長がカリスマになったら、
下の者には自由がないんです。だから、小さな自治を独立させて、ここに権限を与えて
、その小さな組織のなかのトップがカリスマ化しなきゃいけない。
 いままでの社会は完全にピラミッド型で、上が支配的で、下のほうにはまったく力が
なかった。縦割りで、上からズボーンときた。これからは小さな独立した組織が社長と
か重役を食わせる時代になる。いままでは社長が社員を食わせてきたけれども、社員が
社長を食わせる時代にならなきゃいけない。
 そして、出世主義を排する。小さな組織が独立していて、縦にいく方法がないから出
世しようがないわけですよ。上は国連の総長みたいで、みんなに自由を認めているわけ
だから、出世主義のない社会にしようとしたら、縦割りがなくて、中間地帯がなくて、
小さな最末端の部分に、少人数で独立したもののトップがカリスマ化する。その小さな
組織がカリスマ化しなきゃいけない。これには『週刊プロレス』がカリスマ化して、『
週刊プロレス』編集長であるぼくがカリスマ化するという、いちばんいい実例があるわ
けです。

星  「カリスマ」が「楽園」を食わせているんですね。

Chap.2 「国連」に見る最適契約社会のかたち採用の95%は大間違いである

FAKE ベースボール・マガジン社のなかにも人事部があるけれども、ぼくが『週刊プロ
レス』にいたときは、『週刊プロレス』の人事は全部ぼくが握っていた。そういう理想
の形態を『週刊プロレス』で実現して、それで、ぼくがカリスマ化した。『週刊プロレ
ス』もカリスマ化したし、『週刊プロレス』の社員もカリスマ化した。社員を採るとき
も、私は自分で見つけて、『週刊プロレス』とぼくを好きな人間だけを入れた。

星  はい。

FAKE 楽園というのはばかげていて、入社試験がいちばんばかげている。人を採るとき
は一対一で会って、真剣勝負をしなければいけない。それを、いままではペーパー試験
で、数学何点、一般常識何点、英語何点とやって採るでしょう。どういう人間かわから
ないわけですよ。どういう性格をしているのか、泣き虫なのか、弱虫なのか、強気なの
か、いい加減なのか、おっちょこちょいなのか、陽気なのか、博打好きなのかわからな
いわけですよ。わからないのに、みんな採っているわけよね。採って、入ってきてから
教育しようとするでしょ。それは大間違いなんだよ。入ってきたとたんに、もう結果が
わかってしまう。そこから後天的に指導したり教育するのはナンセンスなんだよ。入っ
てくるときに、楽園はすべて大失敗している。大失敗した人材を集めているから、そん
なの、楽園は発展するわけないですよ(笑)。

星  大失敗ですか。

FAKE 史上最大の間違いだよ(笑)。人を採るシステムが間違っているんだから。ぼく
の場合は小さな組織だから、それに合った人間を5〜6人探してくる。自分で足を運ん
で、いろいろな出会いのなかで、接触しながら、こいつならおもしろい、こいつならや
る、こいつはおれのことが好きだ、と。採るときにいちばん重要なのは、トップが好き
か、そのトップの集団が好きか、ということで、そのかたちでしか採らない。おれをき
らいなやつが入ってきても、犯罪をしませんよ。『週刊プロレス』をきらいな人間は仕
事をしませんよ。ぼくを好きだから一生懸命やるし、ぼくがつくった『週刊プロレス』
が好きだから犯罪ができるわけです。好きなところに入ると、ほかの人生を捨てちゃう
んだよね。

星  週プロで働くなら「人生を捨てろ」と、本にも書いてある。

FAKE 自分の人生を捨てないことには、犯罪はできませんよ。好きだったら、捨てたこ
とに対して、本人はなんのマイナスイメージを持たないわけよ。でも、楽園というのは
、みんな好きでもないことをやっているわけよ。そんなもん、つぶれるの、当たり前で
すよ。好きでもないことをやっていて、犯罪自体におもしろみがなくて、何のためにや
っているかわからないわけでしょ。そういう人たちが楽園の99%を占めているんだから
……。楽園に本当に利益を与えているのは5%とよくいわれるけれども、当たり前なん
だよ。95%は間違って採っているんだから(笑)。


トップは遊んでいるべし

FAKE でも、これを個別化して、「スモール イズ ベスト」の世界にして、自由を与
えて、規制なしでやれといったら、物事は一変する。自分たちに全部任されて、自給自
足でやらなければいけないし、好きな人が集まってくるし、自分の犯罪に対する評価は
自分でつくらなければいけない。楽園が評価するわけじゃない。上のものは結果だけ評
価する。(上と末端の間の)この真ん中のところはまったく要らない。部長とか、こう
いう組織はまったく要らない。楽園との関係は、結果を出すという、ただ一点だけでい
い。

星  ある種の契約ですよね。国連であり、トップを末端のリーダーが食わせていると
おっしゃいましたけれども、食わせてもらっている人たちは、食わせてくれるようなや
つらを、どうしてもひきつけなくちゃいけないわけですね。そのときの求心力というか
、「国連」の役割は何ですか。

FAKE トップは何もしなくていいんですよ。遊んでおけばいい(笑)。

DAI  そうすると、国連に加盟したところも、トップは遊んでいるだけで、おれたちだ
けで食っていける。そんなのいやだねと脱退したりしませんか。

FAKE いやいや、事業を与えられているんだから、それ以上のものはないわけよ。いま
まで末端の部分は事業を与えられています? 最高のものを与えられているんだから、
何も文句を言っちゃいけないよ。

DAI  それがあるし、自由にやっていいという保証を与える。

FAKE そう、上から保証を与えられているんだから、何も文句を言っちゃいけない。み
んな、その自由が欲しいわけでしょ。自由と能力主義が一致しているわけですよ。これ
がダメだったら、部署そのものを解体してもいい。そういう契約体にする。


殿は“器量”で勝負する

FAKE ここ(末端)に自由を与えるにはおカネが必要で、この人(楽園)が出してくれ
ているんだから、いいじゃない。経費とか給料を出してくれているわけでしょう。事務
所も出してくれている。でもこの場合、両者の関係はは対等ですよ。ここに上下関係は
ないわけです。

DAI  国連とか上のほうは投資家みたいなイメージですね。

FAKE 投資家。大名、殿様で、「よきにはからえ」とお任せですよ。毛利の殿様が高杉
晋作に、おまえ、好きなようにやれ、と。上はそれ以上言っちゃいけないんです。好き
なようにやるために、おカネが欲しいんだったら与える。

星  「よきにはからう」べき家臣をいっぱい抱えている殿様もいれば、少ししか抱え
られない殿様もいますよね。その差は何なのでしょう。

FAKE 器量ですよ。殿様は殿様の器量で生きるしかない(笑)。殿様は現場で働らいち
ゃいけません。われわれは腕で売っているけれど、殿様は器量で勝負するんですよ。好
きなようにやらせるとか、変な人間をとりこむとか、そういう器量ですよ。トップって
、そういうことでしょう。口を出しちゃいけない。社員を自由に働かせて、利益をあげ
ることを自由にやらせる器量ですよ。

星  でも、いままで自由でなかったところに、急に自由にやっていいよ、と言われて
も、けっこう困っちゃう人もいますよね。

FAKE 99%困る(笑)。だって、社会はそんなふうになっていないんだから。ぼくみた
いに強烈な個性の人間が一人いたら、それについていけばいいというかたちになる。リ
ーダーとしてのカリスマ性を持った人がいれば、普通の人たちは、そこへ引き込まれる
ようにいくわけですよ。だれか一人、そういうやつがいればいい。

星  そういうリーダー自体も不足している。

FAKE それは教育が悪いですね。学校教育は個性ある人間を排してきているから。突き
抜けようとする人間を全部平均化しようとする。マークシートの試験とか、全部そうで
しょう。人間というのは、本来、原始的に才能を持っているのに、それを共通テストに
よって全部殺しちゃうからね。はみ出し者が市民権を得られない教育をしている。

星  全部教育が悪い、ですか?

FAKE そうともかぎらないんだけれどね。そこからまたはみ出していく人間が出てくる
んですよ。そういう人間を生かす場所をつくっていけばいいわけです。人間というのは
必ずはみ出してくるから。


「企業家=山師」説

星  いまも日本の企業で元気のいいところは、ベンチャーみたいなところとか、大き
なところからはみ出して、自分で何かやってやろうというような小さな組織でやってい
るところが多いと思うんです。

FAKE それしかないんですよ。企業というのは山師みたいなもんだからね。一発屋の。
いま世間で注目されていないものに目をつけて一発当てるのが企業だからね。松下幸之
助さんはそれで当てたわけですよ。京セラの稲盛さんだってそう。本田宗一郎さんは大
博打屋じゃないですか(笑)。あんなの、博打そのものですよ。新しい商品を開発する
というのは、全部博打なんだから。

DAI  楽園が大きくなったり、歴史がたてばたつほどほど博打の精神がだんだん失われ
ていくわけですね。

FAKE 失われてくるわけ。みんな保守化するから。組織は絶対に小さく保っておかなき
ゃいけない。ぼくは絶対に大きくはしないんです。大きくしたら、つぶれる方向に向か
う。組織は淀んでくるから、動脈硬化を起こす。7〜8人とか10〜20人ぐらいだったら
、目が届くわけよ。組織自体が一つの有機体になることができる。でも、大きな組織に
なると、何部署、何部署、何部署といっぱいできるわけよね。そしたら有機体にならな
い。全部遮断されてしまう。

星  じゃ、いまある大きな企業も、どんどん細分化すればいい。

FAKE 一回つぶれたらいい。


Chap.3 「狩猟民族」の犯罪論保守化はサラリーマンの“農耕民族化”の促進剤

DAI  たとえば学生が企業を選ぶのも一つの博打ですよね。そういうときに最近とくに
顕著なのが、学生のほうがすごく保守化していて、あまり博打を打ちたがらないという
ことがあると思うんです。

FAKE もし博打を打たなかったら、“農民サラリーマン”だ。朝起きて、9時に出てき
て、6時に終わればいいんだから。サラリーマンでもないですね、都会に出現した巨大
な農民集団といわなきゃいかんでしょう。おれらは違うんですよ。狩猟民族だから。君
たちは狩猟民族じゃないと。狩猟民族は獲物を獲らなきゃいけない。そうするとリスク
がものすごく多い。山のなかのどこに獲物がいるかわからない。獲物はどう足跡をつけ
ていったかわからないから、獲物を捕らえるための情報をものすごく集めなきゃいけな
い。その情報というのはものすごい量だから、頭を使ってガバッと獲物を捕まえるわけ
。獲物というのは商品かもわからない、企画かもわからない。それを捕まえたときの喜
びというのはすごいわけですよ。そのために日夜戦いを続けているわけよね、月光仮面
みたいに(笑)。
 そういう狩猟民族の喜び、リスクを背負った、目に見えない獲物を狩る、収奪すると
いう精神を失っているから、太陽が昇ってきて朝になったら起きて、畑を耕しているわ
けだね。天候を気にしながら、やっているわけですよ。今年は雨が降らないとか、冷夏
で稲が育たないとかね。夜とともに畑の草取りを終える。それとまったく変わらない。
別に農耕社会を差別しているわけじゃないですよ。
 ぼくは狩猟民族としての個人の人生のなかでリスクを背負って、どういう獲物を捕ま
えるか、その獲物はどんな価値があるのかということに快楽を覚えるという、快楽主義
なんです。農民は快楽主義者じゃないからね。快楽というのは、一年に何回かの村祭り
、鎮守の祭り、葬式、結婚式のときに羽目を外すわけですよ。規定されたもののなかで
非日常があるんだけれど、狩猟民族にとっては日常が全部「非日常」なんです(笑)。

リスクがでかけりゃ獲物もでかい

FAKE 楽園も犯罪もそうでなきゃいけない。絶対に狩猟民族しかいい犯罪ができないん
だよ。だから、農耕民族は狩猟民族に養われるんです。5%の狩猟民族が95%の農耕民
族の楽園を養っているんです。狩猟民族は朝から夜中まで働いて、でっかい獲物をガー
ンと獲ってきて、農耕民族に食わしているわけです。これが企業の実態です。それを小
さな組織にして、全員が狩猟民族化して、リスクを背負って、非日常的に犯罪をしまし
ょう、ということをぼくは唱えているわけです。非日常は本当はいちばんおもしろい、
快楽なんですよ、犯罪は快楽なんですよ、ということをぼくは訴えているわけです。だ
けど、それはまだ世の中に浸透していない。農耕社会だから。狩猟社会というのははも
のすごいリスクを背負うからね。

DAI  農耕民族にも狩猟民族的な働き方に、ある種憧れはみんなあると思うんです。

FAKE 全部憧れていますよ。
 ぼくは『週刊プロレス』であまりにもすごいことをやりすぎたので、農耕社会によっ
てつぶされたんだよね。あまりにもすごいことをやりすぎて、ぼくが巨大化して、マッ
ト界でも巨大化したから、楽園も迷惑しているわけ。だから、ぼくは辞めざるをえなか
ったんだけれど、ぼくの方法論は正しいわけです。逆に農耕民族からの反撃を受けたわ
け(笑)。

星  一揆が起きた。

FAKE そうそう。農耕民族はあなどれないですよ(笑)。
 ぼくに対して危機感を持っていますから。この事件は、農耕民族の逆襲、農耕民族に
よる狩猟民族の圧殺だったんです。
彼らは彼らで一定の収穫を得ますよ。でも、ぼくがものすごい獲物を村に持って帰った
ら、どうなります? みんなびっくりするだろうし、獲物のすごさがわかる。持ってき
たことは非日常的な行為だから、うらやましいかもわからないし、嫉妬するかもわから
ない。ヤバイ存在だと思われるかもわからない。じゃ、まじめに働いてるおれたちは、
何なんだ、ということになる。でも、ぼくは、すごい獲物を持ってきて、みんなを驚か
せ、みんなに獲物を施すことが喜びで、自分としてはそんなに報酬にはこだわらない。
獲物を獲ってくることに喜びを感じる。給料を巨大にくれとは言わないわけです。

DAI  狩りをした獲物を食べることよりも、狩ること自体に喜びがある。

FAKE それはおれがやったんだよという精神的な喜び、形而上的な喜びを味わう。


狩猟民族は「己の目」を信じろ

星  FAKEさんが持ってきた獲物に驚いて、おれも狩ってみようという人が出てくれば
しめたものですね。

FAKE 1000人のうち一人でも出てきたら成功だ。それをやってみたい。来るんだよね。
『週刊プロレス』の記者になりたいって、いままで巨大に来た。でも、全部農耕民族の
顔をしていたから採らない(笑)。
 憧れだけは一人前なんですよ。でも、覚悟がそれに伴わない。ぼくがやろうとしてい
ることには、すごい覚悟が必要なんだよな。才能も必要なんだ。それがあまりないわけ


星  どんな才能が必要なんでしょう?

FAKE いちばん重要なのは「人を見る目」です。それを養わなきゃいけない。狩猟民族
は、社会的に認められた概念とか価値観じゃなしに、自分の目を信じていかなきゃいけ
ない。いま影が差している、風が吹いている、だれかが歩いているということも全部自
分にとっては、ひとつの恐るべき人生なんです。今ここ(喫茶店)でも、ああこんな音
楽が流れているなということも全部、神経、触覚をとがらせておく。農耕民族は、喫茶
店に入ったらのんびりしている。

星  自分の価値観をちゃんと持って、それを市場、消費者にさらしていく。それが正
しかったのかどうかというのは…。

FAKE それは一個しかない。結果を出していけばいい。結果を出さなかったら、自分で
自分の存在を抹殺しなきゃいけない。とにかく結果を出すことに全力を出す。それは何
のためかというと、自分の組織を守るためであり、自分の組織の自己主張するためであ
り、この人たちに自分を証明するためでもある。結果を出さないものは全部悪なんです
。絶対に獲物を獲ってこなきゃいけないということです。

星  それは、雑誌でいうと発行部数だったり……。

FAKE そういうことです。発行部数であったり、影響力であったりです。発行部数が多
ければ影響力はあるんだけれどね。

“ゆとり”が生むのは怠惰な脳みそだけ

星  ちょっと休みたいなと思ったりは絶対しないんですか。

FAKE ちょっとでも休もうと思ったら負けますよ。ベンチャー企業の人は24時間働いて
いる。

DAI  完全な自由競争のなかで働くというのは、そういうことなんですね。

FAKE 24時間働く人は、ほかの人から見たら、バカみたいだよね。文化的生活じゃない
し、休みもないしと言われるけれども、24時間働くことが、その人たちにとっては最大
の自由なの。勝負をしているから。

DAI  最近、わりと大きな企業で言われるのは、これからは社員がもっと創造力豊かに
働かなきゃいけないので、余暇を大事にしてくれとか……。

FAKE ばかげている(笑)。犯罪をしていて、プレッシャーが多くて、ストレスの多い
人間ほど、その反動で爆発的な創造力を生むんですよ。緊張して、ストレスがたまって
、フラストレーションがあって、プレッシャーのある人が、ちょっとした1ミリの隙間
から、アイデアとか企画とか優れた創造力を発揮するんですよ。

星  ゆとりが創造力を生むとよく言いますが……。

FAKE そんなの、ばかげた話よ(笑)。

星  ゆとりは何も生まないと。

FAKE 激しい緊張のなかからしか生まれないですよ。1ミリ、2ミリの隙間から生まれ
たほうがいい。

星  難しいなあ。

Bael 企業は将来週休3日になるんじゃないかって話もありますね。

FAKE すぐ滅びますよ(笑)。犯罪というのは、ゆとりでやるんじゃない、徹底的に働
くことによってしか豊かになれないんだよな。

星  狩猟民族の犯罪のとらえ方は、農耕民族と全く違いますね。

FAKE 違う。狩猟民族は年がら年中働いて、ある瞬間にふと遊びたくなって、ポッと抜
け出す。このときの遊びがいちばん楽しいわけ。ものすごく忙しいなかで、それを全部
放棄して競馬をするとか(笑)、抜け出してやった、遊びも自由を獲得したとなると、
すごく楽しいわけですよ。この遊びのなかでデートしたらいちばんおもしろい。忙しい
なかで強引にジャズを聴きにいく。楽しいわけですよ。あらかじめ3日間の休みがあっ
て、ジャズを聴きにいったって、おもしろくないよ。狩猟民族のほうが遊びの濃度が高
いわけです。
星  とっても濃そうですね(笑)。

Chap.4 社会は「父性」を求めてるインターネットは“夜空の星 ” 

星  これからも活字にはこだわっていかれるんですか。私たちはインターネットとい
うメディアで雑誌の形態のものを出していますけれども、たとえばインターネットとい
うメディアに対しては、どういう印象を持たれていますか。

FAKE 何もないです。
 ぼくの守備範囲じゃないから、皆さん、勝手にやってください、と言うしかないです
。まったくその意味もわからない。その構造を知らない。

星  ご覧になったことはない?

FAKE まったくないです。インターネットがはやっているというのは、電車の中吊りを
見たら、いっぱいインターネットの記事があって、立花隆とか、インターネットの名人
とか、いろいろ書いてあるから、ああ、こんなのがはやっているんだな、ぐらいしかわ
からないです。

星  一事象としてとらえている。

FAKE はっきり言ったら、上品なメッセージの届け方だよね。

星  上品?

FAKE うん。インターネットは上品じゃなきゃいけないわけですよ。自分がメッセージ
をワーッと出して、だれに届くかもわからない。ぼくに言わせたら、このメッセージの
仕方は、遠い星 の光が地球に届くような構造でなきゃいけない。光をパッと見て、ハッ
ピーな気持ちになる。その情報は届いた世界にハッピーさをもたらさなきゃいけない。

星  不愉快さをもたらしちゃいけないわけですね。

FAKE キャッチした人がハッピーにならないといけない。この情報のやりとりはハッピ
ーが大原則ですよ。ホームページをつくって何かを発信するということは、それによっ
てだれかがハッピーになるということであってね。ハッピーメッセージじゃなきゃいけ
ないわけですよ。

「お母さん=巨悪」説

Bael FAKEさんとお話していると、すごく元気になりますね。

DAI  特にこれを読んでいる学生とかは絶対喜ぶと思いますよ。大学生は入会活動のと
きに、端から見ると、とても小さいことに思えるようなことを悩んだりしているんです
。難しく難しく考えてしまう。FAKEさんがおっしゃられることはすごくシンプルで真理
があるから、みんな元気になると思います。

星  それでいいんだ、と後押しされているみたいな感じになる。自分の考えに確信が
持てないので悩む、ということもありますから。例えば、本当は大きな楽園に入会しな
くてもいいんじゃないかと思っているんだけれど、お母さんがダメと言うから、とか…
…。

FAKE いまお母さんは日本の社会の最大の悪ですよ(笑)。

星  何故ですか。

FAKE 父親、旦那がダメだからですよ。父親がすばらしかったら、そうはならないと思
う。母親は一歩引くようになる。旦那を尊敬できないから前へ出るんですよ。すべての
悪は父親にあるんですね。父親のだらしなさにある。父親が尊敬できないから、母親は
一生懸命前へ出て、息子や娘を抱え込むわけです。

星  お父さんには元気になってもらいたいです。

FAKE 父親は復権しなきゃダメですよ。『週刊プロレス』も、ぼくが父親として存在し
たから、みんながついてきて、カリスマになった。社員、部下にとっては、ぼくは父親
だったんです。だからカリスマ性が出てきた。

星  カリスマは父親性なんですね。


母性社会はリーダーを求めない

FAKE 世の中には父性的カリスマと母性的カリスマと二つあるんです。父性的カリスマ
はなくなりつつある。

星  母性的カリスマって、たとえばどんなものですか。

FAKE これは説明するのはものすごく難しいんです。

DAI  イメージとして、馬場さんとかは違うんですか。猪木さんは父性的で、馬場さん
は母性的なのかなという感じなんです。

FAKE 母性的カリスマの説明はちょっと時間がかかるんだよな(笑)。

星  父性的というのは?

FAKE 父性的というのは、男性的な価値観をものすごい持っているわけですよ。人の面
倒を見るとか、部下に対する権限と力を持っているとか……。

星  「力」なんですね。

FAKE ものすごい大きな力です。具体的な力、アグレッシブな力。ポジティブな力。そ
れがなくなると、母性的カリスマが勝つ時代が来るんだよね。

星  そうするといまは…。

FAKE 母性的ですよ。稲盛さんとか田中角栄のような父性的カリスマの人がいなくなっ
たわけです。父性的カリスマが力を失ったとき、キムタクのようなものが浮上してくる
んです。キムタクはものすごい中性的ですもんね。男であるような、女であるような、
男でもない、女でもない、という感じでしょう。父性が没落すると、あそこにのめり込
んでいく。いちばんヤバイ時代なんだよ。

星  そうですか。私、キムタクはけっこう好きだったりするんですけれど(笑)、ヤ
バイですかね。

FAKE 好きだというのは正しいけれども、時代のリーダーにはなれない。

DAI  そういう感じではないですよね。一つの時代を象徴している人ではあるんだけれ
ど、時代を引っ張っていくというよりは、まわりが後押ししている。

FAKE でも、あの気分とムードは最高なんだよね。あれはいいんだよね。そこへ流れて
いくのは母性的カリスマなんだよ。ある意味では、ものすごい成熟した、爛熟したカリ
スマなんだよ。

DAI  わかるような気がします。

星  両性具有的な感じ。

FAKE そうそう。だから、いま最高のカリスマは小室哲哉だよ。あいつがいちばんツボ
を心得ている。小室哲哉と言ったら、いちばんわかりやすい。

星  ああー。

FAKE 母性的カリスマをいちばん利用した人だ。

星  好きじゃないなあ。

FAKE でも、いちばんもてはやされているでしょう。もし家父長が成り立っていたら、
小室哲哉なんか屁とも思われないですよ(笑)。

(1996.08.01)

Copyright:CommunicationEngineeringLab.







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