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 「盗難防止ゲート」に反応させなくする方法


一昔前まで、ビデオレンタル店でビデオを借りる時には、ビデオの空ケースやレンタルカードなどをカウンターに持っていき、カウンターにてそのタイトルのテープを借りるという方法が取られていました。これは「テープの盗難防止」のために考えられた方法なのです。

しかし、この方法では確かにテープを盗まれることはありませんが、カウンターでテープを捜すのに時間がかかったり、また展示の棚の他にテープを保管するための棚も別に必要であるなど、あまり能率的ではありませんでした。

またレコード店などでも、昔はすべてLPレコードなどサイズが大きいものが多かったために盗難や万引きは少なかったのですが、CDになってから盗難が増えたため、何か良い盗難防止の方法はないものかと色々な装置が考え出されました。


その中で特に盗難に効果のあった装置が「非接触無線キャリア」と呼ばれる装置で、この装置自体は本来は盗難防止ではなく、会社などへの入門時にIDカードとして使用されていたり、工場などで部品の在庫が今どの位置にあるかなどをコンピュータ管理する場合に使用されていたものなのです。

この非接触無線キャリアの構造は、まず「ゲート」と呼ばれる装置の間を常に無線電波が出ており、この中を「データキャリア」と呼ばれるIDカードなどを通すことで、データキャリアに内蔵されたアンテナで無線をキャッチし、この無線電波を電池代わりにしてデータキャリアに登録されたデータを今度はゲートに送出して、ゲートで通過したキャリアを確認するというものです。

この装置の利点は、データキャリアの電源はゲートからの電波を使用しているために、データキャリアに電池などを内蔵する必要がないということです。つまり常に持ち歩くデータキャリアにはアンテナとデータを蓄積する部分だけがあれば良く、超小型化することが可能なのです。

さらに「盗難防止」とだけ考えれば、別にデータキャリアにデータを持つ必要がなく単純にゲートの電波を受信した(つまりゲートの外にキャリアを持ち出そうとした)場合に、何か適当な信号を返すだけの構造で良いので、さらに小型化が可能です。
こうして、まず最初にこの非接触式無線キャリアは、レコード店に採用されました。
レコード店では、店の出入り口にゲートを設置し、別の外袋の中にCDと2×5センチ程度の紙切れを入れて陳列します。この2×5センチの紙切れが「データキャリア」なのです。

CDを購入する場合、レジでは外袋とデータキャリアを外し、CDだけをお客に渡すのです。こうすればゲートを通ってもデータキャリアがないのでゲートは反応しません。ところがデータキャリアを外していない状態(つまりレジを通さずに盗もうとした場合)は、ゲートを通過する際にデータキャリアに無線電源が供給され、データキャリアがゲートに信号を送って「万引きだ」と知らせるのです。

まさか誰もそんな2×5センチ程度の紙切れでそんな事が出来るとは思いませんので、これで相当数の盗難や万引きが発覚して強力な盗難防止装置となりました。

ただし、現在では一部の人は「あの紙がデータキャリアだ」という事を知っているため、勝手にこの外袋とデータキャリアを外してCDだけを盗む場合があるようです。


このレコード店で使用しているタイプの装置をより小型・強力にしたものがビデオレンタル店で採用されています。

ビデオレンタル店で採用されたものもゲートとキャリアの原理はまったく同じなのですが、レコード店ではデータキャリアが紙で取り外しが可能であったことから「勝手に外す」ことでゲートを抜けることが可能でしたが、ビデオレンタル店で採用されたものはなんと「データキャリアが強力なシールになっている」のです。

つまり、ビデオテープに直接強力に貼り付けることで、勝手にデータキャリアを外されることを防止したのです。さらに最近のビデオレンタル店はテープの貸し出しや会員の管理にバーコードを使用している場合が多いため、このデータキャリアのシールの上に全く関係ないバーコードのシールを貼ることで、ぱっと見はデータキャリアには見えず、管理用のバーコードシールにしか見えないというカムフラージュまでされているのです。

ただしこれには2つの欠点があるのです。まず1つは「シールで貼り付けているから取り外せない」と言うことは、「盗もうが正式にレンタルしようが、ビデオテープには常にデータキャリアが付いているのだから、レコード店のものとは違って必ず店から出るときにゲートにデータキャリアを通さなくてはいけない」のです。

これでは、人が通るたびにゲートが反応して誰が万引きで誰がレンタルかの見分けが付かなくて、とても盗難防止にはならない・・・のですが、ここで「データキャリアの欠点」を巧みに利用した判別方法を取っているのです。それは、データキャリアには電池がなくゲートからの電波を電源としているので、「ゲートの電波をキャリアに届けなければデータキャリアは動作しない」のです。

この電波を届けない細工は、ビデオをレンタルした時にテープを入れてくれる、レンタル店独自の「レンタルケース」に秘密があるのです。

非接触式無線キャリアを採用しているビデオレンタル店のレンタルケースには、ケースの内側に「銀紙」や「アルミのシール」が貼ってあるのです。この銀紙やアルミのシールが貼られたケースにデータキャリアの貼られたビデオテープを入れることで、ゲートを通過してもゲートからの電波は銀紙やアルミのシールにさえぎられてデータキャリアには届かなくなり、電波が届かなければデータキャリアは動作しませんので「レンタルされて店外に持ち出せる」ようになるのです。

つまり、この仕組みを逆手に取り、ビデオテープをアルミ箔などに包んだり、カメラマンなどが使うアルミや鉄で出来たトランクにビデオテープを入れてしまうと、レンタルケースに入れるのと同じでデータキャリアに電波が届かなくなるので、この手口での盗難も発生しているようです。


さらにもう1つの欠点は、データキャリアは「ゲートの電波をアンテナで受信して電源にする」のですから、何らかの方法でアンテナ部分を壊してしまえば、もうゲートを通してもデータキャリアが動作しなくなるのです。

特にビデオレンタル店で使用されているデータキャリアは、とても薄いシール状になっていますので、上からカッターやカミソリなどで切り込みを入れただけでもうアンテナと本体をつなぐ回線が切れてしまうのです。

アルミ箔でビデオテープを包む方法では、店の中でテープを包まなくてはならないので目立ちやすいのですが、このアンテナを壊す方法では、まず最初に普通にビデオをレンタルし、家に持ち帰ってカムフラージュのバーコードシールをはがしてデータキャリアを出し、カッターでいくつか切り込みを入れてデータキャリアを壊して、元通りにバーコードシールを貼ります。

そしてビデオを返却する場合に、わざとレンタルケースの銀紙やアルミシールをはがして「データキャリアが反応する状態」にしてゲートを通り、「データキャリアが壊れてゲートが反応しない」ことを確認します。もし万が一アンテナ切断に失敗してゲートが反応してしまっても、「借りたテープを返しに来た」のですから、レンタル店に何ら疑われることも文句を言われることもないのです。

こうしてデータキャリアが壊れたことを確認してから、後日、まんまとテープを拝借するという念のいった手口まで登場しているのです。


他にも、まず普通にビデオテープをレンタルしてレンタルケースを入手し、空のレンタルケースを持ってレンタル店に行き勝手にケースにテープを入れてしまうとか、店員の目を盗んでゲートのコンセントを抜いてしまうといった荒技に近いことまで行われているようです。







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