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禁無断転載 今回、SCC で逮捕されたのはA氏と鎌倉圭悟さんの2名でしたが、そのうちの鎌倉 さんが事情説明の文章を書きましたので、UP します。なお最初に明確にしておきま すが、彼の逮捕はA氏と違って、全くのとばっちりでした。 ところで騒ぎの元凶(…)でもあるA氏の方は、現時点では事情説明はしたくないようで す。なお、この文章はこの部分も含め、 1)内容の改変をしないこと 2)出展(NIFTY-Serve.FCOMIC)を明らかにすること …の2点を条件に、自由に転載してくださって構いません。 (代理UP 鎌倉友人代表 西形 公一) スーパーコミックシティにおける逮捕、当事者からの報告 *お詫びと、事実確認* このたびは私、ならびに「冥土出版」主宰のA氏が逮捕されました件で、各方面の方々にご迷惑をお掛けしております。 最初に申し上げておきますが、今回のスーパーコミックシティ会場内での逮捕は「銃刀法違反」によるものです。一部では「サリン防止法によって逮捕された」といった噂が流れているようですが、それは誤りです。 確かに「冥土出版」はサリンの製造法を扱った同人誌『魔法使いサリン』を販売してはいましたが、それは逮捕そのものとは何の関係もありません。(ちなみに私は会場の外、月島署内での逮捕です) 『魔法使いサリン』に関する報道は、まず5月16日発売の『サンデー毎日』に、他に5月21日付け『夕刊フジ』、5月20日朝の日本テレビ「ルックルックこんにちは」にてとりあげられました。(双方とも『サンデー毎日』の記事を元にしています)。 『サンデー毎日』の記事には、明らかな誤りがあります。逮捕されたうちの一人が「猥褻な本を売ろうとしていた容疑による」とした部分、これは事実に反した記述で、実際は「猥褻な写真を持っていたので販売目的であると因縁を付けられて」逮捕されたのです。これが、私の容疑だったわけですが、いいがかりです。不当逮捕といっていいはずです。 今回の事件の、現在までの簡単な経緯を書いておきます。 *事件の経緯* 5月4日、晴海にて開催された「スーパーコミックシティ」において、事件は起きました。 サークル「冥土出版」主宰のA氏が、シティ主催者側には無許可でオウム真理教発行の小冊子などを販売したのがきっかけです。 このA氏という人物、以前より、新左翼・ナチス・統一協会・裏ビデオなど、幅広く日本のアングラ文化を取り扱った同人誌を発行していて、知る人は知る存在でした。 テレビなどを通じて報道されているオウム教団の行動を、A氏は「おもしろい」と感じました。普通の人間が、「怖い」「恐ろしい」と口にしながら、尽きせぬ興味を感じるのと同様。彼のアングラ文化マニアとしての血が騒いだようです。彼は、オウム教団が経営しているラーメン屋の店長に接触し、彼を通じて、オウム教団発行の小冊子・ビデオ・麻原本人の歌うミュージックテープなどの入手に成功しました。A氏の目論見の一つに、それでもって一儲けしよう、というさもしい考えがあったことは、告白しなくてはなりません。 この時期、麻原逮捕近し、ということで、それによるオウム下部信徒の報復に備え、警察からシティ運営陣に注意が伝えられていたと聞きます。(私は当日、本を委託で置かせてもらっていただけだったため、会場がそんな状況にあるなんてことは知りませんでしたけど) シティ当日、私はA氏と、彼の友人の車に乗って、3人で晴海に行きました。家が近所ですので。 その頃、私はにわかに商業誌の仕事が増えたところでして、当日も2日間完徹のまま会場へ向かいました。出がけに、私は知人から「見せてくれ」と頼まれていた盗撮写真20枚を鞄の中に入れてました。別に自分で撮影したものではなく、某ポルノショップで購入したものです。ところが寝不足というのは恐ろしいもので、会場で知人に会ったときには、すっかりそのことを忘れてました。 12時半ごろ、私が夕食を終えてA氏のブースへ戻ろうとすると、既に警察が取り巻いていました。 おり悪く、A氏も他のサークルの本を見に行っていたところでして、私は店番を手伝ってもらっていた知人が心配で、A氏のブースへ行きました。 ようやくA氏が戻り、彼は事情を説明するために控え室へ連れていかれました。(このときA氏は荷解き用の登山ナイフを持っており、そのために銃刀法違反に問われ、現行犯逮捕されました) A氏はいったんブースに戻ってきた後、警察署に連れて行かれることになりました。そのさい、事情聴取ということで、A氏と私を含めた3人が、警察へ行きました。この時、私は愚かにも、自分の手荷物を目いっぱい持ったまま、署へ向かってしまいました。 警察署で、私がオウムであるかないかという尋問をしばらく受けた後、鞄の中を調べられ…し、しまった。あの写真、持っているの、忘れてた。 ……私はそれでもって、「猥褻物販売目的所持」という名目で現行犯逮捕、ということになってしまいました。逮捕状もないのに、「逮捕時の供述書」に署名捺印してしまった。今思い出すと、とても悔しい。ちなみに、猥褻写真は、持っているだけなら別に罪に問われるものではありません。 当然、逮捕の目的はオウムとの関係の洗い出しにありました。とはいえ、そんなものあるわけもなく、念のため家宅捜索までおこなわれましたが、なあんも出てきやしません。 私も、本来なら3日で出てくることができたのですが、ポルノ漫画家の意地として、入手先を黙秘しましたので、拘留が10日に延長になりました。が、はじめから不当逮捕ですので、起訴には至らず、釈放されました。 ……ところでさ、警察ってさ、不当逮捕してさ、間違いだって分かってもさ、なあんもフォローないのな。 今回の逮捕劇で一番責任があったのは、A氏だと思う。私の非は、 1、A氏を止め得なかったこと 2、盗撮写真を持っていたことを忘れていたこと だと思います。……でもこれ、とばっちりっていわない? 私の視点からみた、事件の経緯は、以上です。 *この事件の、他のイベントへの影響* 心配されている、他のイベントへの影響は、当面、考えにくいという話です。 月島署の考えでは、今回の逮捕は、あくまでオウムがらみの特殊な例であるということで、今回を前例として、今後即売会に警察が積極的に介入する、ということになるわけではないそうです。ですから、今回のことで過剰に神経質にはならないで頂きたいと思います。 とはいえ、創作活動というものは、面白い題材を扱っているほど、誤解されやすいものです。その「誤解」によって、なにも悪いことをしていなくても逮捕され得る、ということが、今回、明らかになりました。 従いまして、「誤解され得る」題材を扱っている方々は、自分が、今回の私たちのように、逮捕といった事態にまで至る可能性を、忘れてはならない気がします。 その時に備え、あるいは、そういう事態を避けるためにも、各人、己に対する法的な備えをしておくべき時期に来ていると思います。 今回は、それが、極端なかたちで表面化したのだと考えます。今回の件がなくても、猥褻問題、著作権問題、風紀問題、防災安全上の問題などで、警察がその気にさえなれば、逮捕することそのものは、簡単なのです。 *逮捕されると、どういうことになるのか* 逮捕された場合、弁護士を呼ぶ権利があります。1回だけは無料で会うことができますが、その後もお願いするということになると、20万円からかかります。弁護士との接見1回につき、さらに5千円かかります。(弁護士によって要求金額に差はありますが) また、所持品は一切一時預かりということで警察の手に渡りますので、弁護士さんを通じて誰かに連絡をとるとしても、メモなどを参照することができません。頼れるのは、己の記憶力だけです。連絡するべき相手の電話番号を、最低2ヶ所は憶えておくべきです。逮捕されたときのキーマンは、多分あなたです。あなたのために動いてくれそうな人間の電話番号を複数記憶しておかないと、連絡がとれない人物が発生します。1ヶ所しか記憶していない場合、その相手も一緒に逮捕されている場合もあるでしょう。旅行中かも知れません。 事件が「起訴」にまで及びますと、弁護士料はもっと高くなることもあります。略式起訴で済ませる場合、罰金として、10万円以上覚悟したほうがいいでしょう。正式の裁判にまで至る可能性が出たときは、保釈金も用意しておかなくてはなりません。100万から200万ていどと見ていいでしょう。 警察まで「任意出頭」する場合、余計なものは一切持っていてはいけません。私の場合はまた極端でしたけど、A氏のように7センチ以上のナイフを持っていれば、逮捕の名目にはなります。サークル主宰者だけは、任意出頭に素直に応じるべきです。任意出頭しますと、家に帰るには、身元引受人が必要になります。親御さんを引受人に指名するのが嫌な人は、そのためにも誰かの電話番号を記憶しておく必要があります。 さて、逮捕されますと、その後差し入れがない限り、逮捕されたときの持ち金で、全てを賄うことになります。一応、3食は無料で出ますが、お金がないと、昼食はコッペパン2個のみになります。カツドンとか食べたければ、自分でお金を払って買うことになります。金に余裕があれば、牛乳も、昼食のとき頼むことができます。金がないと、お湯しか飲めません。着替えの服も自分の金で買うことになります。 逮捕された場合、ふつう、72時間は拘束されることになります。さらに尋問されることになりますと、「拘留」ということで、10日間留置所生活を送ります。拘留は、最長20日までつくことがあります。併せて、23日間ですね。その間に、容疑が晴れれば釈放になりますし、容疑が固まれば、起訴になります。起訴されると、拘置所に移動になります。拘置所は、刑務所ではありません。保釈金を払えば、出て来れます。裁判のうえ刑が確定しますと、これで初めて「前科」がつくわけです。よほどの大罪でない限り、執行猶予がつきます。万が一、それがつかないと、刑務所でお務めしなくてはなりません。刑務所ってとこは、辛いらしいですよ。 これらのことは、「面白い題材」を扱っているほど、起こり得る可能性があります。面白い題材ほど、「誤解されやすい」からです。もちろん、いわゆる「徹夜組」の身の上にも起こり得ることです。自分の身には絶対ふりかからないと、あなた、言い切れますか? 他人が、なにをどう誤解するか、判ったものではありませんよ。他人ごととは思わない方がいいと思います。 面白い題材を扱っている方、誤解されそうな行動をとっている方は、覚悟を決めておいてください。次は、あなたかも知れません。 覚悟を決めて、気合いを入れて、用意するべきものは用意して、法律の勉強もしておいて、楽しい同人誌活動をされてください。 逮捕されて、本当に辛い目に会うのは、逮捕された本人よりも、むしろその周辺にいる人たちなんですよね。 当事者からの報告は、以上です。 1995、5、28 鎌倉圭悟 (連絡先) 新宿区西新宿7−3−10 山京ビル503−102 |